PTSDと不眠

PTSDという言葉を聞いたことはありますか?

心的外傷後ストレス障害の略称で、いわゆる「トラウマ」です。

過去に体験したショックなできごとや恐怖、不安などが脳の一部にダメージを与えてその後の生活に問題が起きるものです。

 

PTSDはほぼ確実に不眠を起こします。

実は、あなた自身も気づかない過去のトラウマが不眠や現在の生きづらさに繋がっているかもしれません。

 

そこでこちらの記事で不眠の原因の可能性としてPTSDについて取り上げます。

PTSDはどんなものか、PTSDで不眠が起きるメカニズムや対処法を詳しく見ていきましょう。

PTSD、トラウマって? 症状は? フラッシュバック、眠れないなど

PTSDといえば戦争から帰ってきた兵士たちがトラウマを抱えている・・・といった話が有名かもしれません。

彼らは、戦争で昨日まで一緒にご飯を食べていた味方の兵士たちが一瞬で死んでしまったり、敵に捕まっていつ自分も殺されるかなどの恐怖にさらされてPTSDになってしまったのです。

 

ただ、注意してほしいのはPTSDは戦争のような特別な環境だけで起きるわけではないことです。

一番起きることが多くて、しかも明るみにでないのは家庭内暴力や性的虐待、学校でのいじめなどで起きるPTSDだと言われています

 

戦争や地震、津波などの一過性のショッキングなできごとで起きるものはPTSD、家庭環境など長期間に及ぶ心理的負担で起きるものはC-PTSD(複雑性PTSD)と呼ばれます。

 

 

子どものころのできごとでPTSDになった方は、大人になってからそれが原因だと気づかずに生きづらさを抱えていることがあります。

なんとなくいつも体調が悪い、辛い、眠れないといった症状が過去のトラウマと結びつけることができないのです。

 

もしかしたら今不眠を抱えているみなさんの原因が過去のトラウマにあるかもしれません。

まずは、自分がPTSDであることを自覚することが症状をやわらげる第一歩です。

PTSDの方に特徴的な症状を見ていきましょう。

 

フラッシュバック、悪夢

フラッシュバックとは、過去にあった嫌な経験をふとしたきっかけで鮮明に思い出すことです。

あのときあんなことあったな~としみじみと思い出す感じではなく、まるでもう一度それを体験するかのような恐ろしい感覚です。

実際にそのとき聞いた音、見たもの、受けた痛み、辛さなどが感じられるような感覚になります。

 

また、それと同じ体験を夢の中で悪夢として見ることもあります。

家であった嫌なこと、学校であった嫌なことなどを何日も繰り返し見て、ばっと飛び起きたときにはどっちが現実か分からなくなるくらいのリアリティがあります。

 

 

トラウマを思い出させるものや場所を避ける、怖がる、忘れようとする

たとえば小さいころ父親に厳しく叱られた経験がトラウマになった人の場合、大人の男性が怖くて避けようとしたり、実家に帰るのが怖くなったりします。

本人が気づかないうちに過去にあった酷いことを忘れている(忘れようとする)こともあります。

 

 

神経が過敏になる

小さいころいつ怒り出すかわからない親がいたなどの理由で、いつも物音や人の気配に敏感になったり、警戒心が強くなったりします。

その結果いつもいらいらしやすかったり、不眠になったり、集中力が落ちていたりします。

 

 PTSDの方に特徴的なこういった症状のほかにも自分の心を守るために感情が麻痺して喜怒哀楽が薄くなったり、いつも不安や恐怖をもって生活しているので不眠の症状やうつ症状が出ることがあります。 

 

 

PTSDになってしまった原因はなに?

PTSDの原因は、自分が受け止めきれないほどの大きなショックなできごとを目の当たりにしたり、逃げることができない環境で継続的に痛みや恐怖、不安にさらされてきたことです。

 

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、家庭環境などが原因でPTSDを持っている方は、アダルトチルドレンと呼ばれる人々と多くの共通点があります。

あなたの不眠はアダルトチルドレンが原因?

 

同じ環境にあってもPTSDになる人とそうでない人がいますが、それは遺伝的な要因の差であって、その人の心の弱さとかそういう問題ではありません。

「自分の心が弱いからだ」と思う必要はありません。

 

脳画像の分析によって、PTSDを発症した方は脳の一部が損傷しているなどの機能不全が起きていることが分かっています。

フラッシュバックなどの症状は、「昔のことをいつまでも」とかいう根性論でどうにかなるものではありません

 

 

PTSDの診断基準やチェック方法は?

先ほど書いたような症状が1ヶ月以上持続して、日常生活に問題が起きている場合に診断されます。

日本トラウマティック・ストレス学会にPTSDの基準が書いてありましたので、紹介します。

 

侵入症状

トラウマとなった出来事に関する不快で苦痛な記憶が突然蘇ってきたり、悪夢として反復されます。また思い出したときに気持ちが動揺したり、身体生理的反応(動悸や発汗)を伴います。

 

回避症状

出来事に関して思い出したり考えたりすることを極力避けようしたり、思い出させる人物、事物、状況や会話を回避します。

 

認知と気分の陰性の変化

否定的な認知、興味や関心の喪失、周囲との疎隔感や孤立感を感じ、陽性の感情(幸福、愛情など)がもてなくなります。

 

覚醒度と反応性の著しい変化

いらいら感、無謀または自己破壊的行動、過剰な警戒心、ちょっとした刺激にもひどくビクッとするような驚愕反応、集中困難、睡眠障害がみられます。

 

上記の症状が1ヵ月以上持続し、それにより顕著な苦痛感や、社会生活や日常生活の機能に支障をきたしている場合、医学的にPTSDと診断されます。

なお外傷的出来事から4週間以内の場合には別に「急性ストレス障害Acute Stress Disorder: ASD」の基準が設けられており、PTSDとは区別されています。

 

引用元:PTSDとは|日本トラウマティック・ストレス協会

 

PTSDはうつ病のような精神疾患と共通の症状があったり、精神疾患を併発している可能性があるので見極めが大切です。

 

たとえば、誰かに見捨てられることへの不安が強い→境界性パーソナリティ障害の可能性

一日のうち朝方に気分が落ちており夜に近づくにつれて楽になってくる→うつ病の可能性

などです。

それぞれについて詳しくは別の記事をご覧ください。

見捨てられてしまうことへの不安、境界性パーソナリティ障害と不眠

不眠の原因としてのうつ病 その他間違いやすい病気

 

 

PTSDの治療法は? 精神療法と薬を使った治療法

PTSDの治療法には大きく分けて精神療法と薬物療法の2つがあります。

精神療法では、持続エクスポージャー療法とEMDRという治療法が効果的であることが分かっています。

 

持続エクスポージャー療法

この治療法はとても有効なのですが、トラウマを刺激する方法でもあるので危険でもあります

精神科、メンタルクリニックなど必ず専門家のもとで行いましょう。

 

持続エクスポージャー療法は、場所、音、天気、周りにいる人や物などトラウマになっているものを思い出す様々な条件とトラウマの結びつきを弱めるPTSDの治療法です。

あえてトラウマを起こす条件を少しずつ受け入れて、それでも危険性や恐怖がないことを学習します。

 

 

たとえば、「小さいころ父親から暴力を受けていた」というトラウマを例にすると大人の男性、父親、大きな音、大きな声、実家などが恐怖の条件になっているかもしれません。

大人の男性を見るだけで恐ろしい、とても不安になったり、冷や汗をかいたり、気が張り詰めることもあるかもしれません。

 

そこで見知らぬ男性の写真を眺めてみます。

恐いと思いますが、その写真を見ていても怒鳴られませんし、暴力をふるわれることもありません。

それを脳が理解してくれれば少しずつフラッシュバックを起こす条件が消えていくのです。

 

次に街なかで見知らぬ男性を見る、大きな音を聞いてみる、父親の写真を見てみる、父親の声を聞いてみるなど少しずつ条件を近づけていって、それでも自分に危害が及ばないことを学習していくのです。

 

EMDR

EMDRは”眼球運動による脱感作および再処理法”というちょっと長くてややこしい名前の治療法です。

人は寝ているときにレム睡眠(浅い睡眠)とノンレム睡眠(深い睡眠)という2つの睡眠を繰り返しています。

 

レム睡眠のときに人の眼球はまぶたのなかでぐるぐる動いているのですが、そのときに記憶の整理や消去が行われていることに注目したのがこのEMDRです。

 

実際はいくつものステップがありますが、一番特徴的なのは過去のトラウマになっているエピソードを思い浮かべながら、治療者が左右に振る指を目で追います。

基本的にはこれだけですが、これが実際にトラウマの処理に役立つのです。

 

これも持続エクスポージャー療法と同じで、専門家のもとで十分な説明を受けたうえで行いましょう。

 

薬物療法 うつ病の薬が効きます

薬物療法ではうつ病の方に使われるSSRIという種類の抗うつ薬が使われます。

SSRIはPTSDの方の恐怖や不安といった症状に有効です。

最も有効性が高いのはパキシルとジェイゾロフトという薬です

 

 

PTSDで不眠になるときの簡単な対策法 不安などで眠れないとき

ここまで書いてきたようにPTSDになると、いつも神経が緊張していたり、不安になりやすくなったり、悪夢を見るのが怖くて不眠になることが多いです。

 

そんなときは異常に緊張している神経やこりかたまった筋肉をほぐして、気持ちをリラックスさせて眠りの質を上げましょう。

簡単にできる不眠対策法を紹介していきます。

 

寝る1~2時間前に入浴する

寝る1~2時間前にゆっくりお風呂につかると深部の体温がじっくり上がって、寝るころには少しずつ体温が下がってきます。

人は深部体温が下がっていくと眠気を感じたり、眠りの質が良くなりますので、寝る前にお風呂につかるのは睡眠に良いです。

しかも血行も良くなるので、いつも緊張していて肩などがこりやすい場合は一石二鳥。

 

暑すぎるお湯につかると逆に神経が興奮して寝付きが悪くなってしまうので、ぬるま湯につかるようにしましょう。

 

寝る前にストレッチをする

寝る前に首、肩など普段こりやすいところをストレッチしてほぐしてみてください。

こりがほぐれれば緊張も少し楽になって寝付きが良くなりますし、朝起きたときの疲労感も全然変わってきます。

 

478呼吸法をやってみる

478呼吸法は、4秒かけて息を吸う、7秒間息を止める、8秒かけて息を吐くのを3セットやる呼吸法です。

これをやってる間は脳が他のことを考えないで済むので、脳の負担が減ってストレスをやわらげられますし、寝付きも良くなりますよ。

寝る時に緊張してしまったり、考え事やまた悪夢を見るんじゃないかと不安になりやすい方に効果的です。

寝付きが悪い時に今すぐできる簡単対策「478呼吸法」

 

睡眠サプリを使ってみる

実はサプリメントのなかには、睡眠をサポートしてくれるものがあります。

薬とは違って副作用もないですし、依存する危険性もありません。

おすすめは実際に不眠だった妻が使ってみて良かったグッドナイト27000です。

使ってみたレビューも別の記事で詳しく書きましたので、ぜひご覧ください。

不眠の妻がグッドナイト27000を使ったら眠れた!使ってみた感想

 

 

まとめ:フラッシュバックや不眠を起こすPTSDの原因や治療法

PTSDはいわゆるトラウマと呼ばれる症状を持つ病気で、自分が受け止めきれないショッキングな出来事や家庭で受けた暴力、暴言、性的虐待などが原因で発症してしまいます。

PTSDはほぼ確実に不眠を起こしますが、自分を守るために辛かった記憶を封印してしまい、不眠の原因が分からない場合があります。

 

不眠の原因がPTSDだとしたら、まずはそれを認識することが不眠症や生き辛さの改善に繋がりますので、もしかしたら・・・と思ったらぜひ確認してみてください。

PTSDの主な症状は、フラッシュバック・悪夢(トラウマに対する)、トラウマを思い起こすものを回避したり忘れようとする(実際に忘れる)、神経が過敏になっていらいら、物音に敏感、不眠、将来に悲観的などです。

 

PTSDの治療には持続エクスポージャー療法やEMDRといった精神療法と薬物療法があります。

持続エクスポージャー療法もEMDRも過去のトラウマをあえて思い起こして、それはもう過去のもので今はもう大丈夫と認識できるようにする方法です。

効果的ですが危険な面もあるので、必ず専門家の元で治療を行いましょう。

薬の治療ではSSRIという薬を使うことでPTSDの恐怖や不安をやわらげることができるので、精神療法と並行して使用していくのが良いです。