不眠の原因は糖尿病かもしれない

最近たまに手足がびりびりとしびれることがあったり、やけにのどが渇いたり、夜中に度々トイレに起きて眠れないことはありませんか? もしかしたらそれは糖尿病の初期症状かもしれません。実は糖尿病が不眠の原因になることがあるのです。

 

糖尿病は、生活習慣の悪さや遺伝的な原因によって発症します。尿から甘い匂いがするとか、最悪の場合手足が壊死してしまうとか失明してしまうなどという恐ろしい話を聞いたことがあるかと思います。

 

そんな糖尿病がなぜ不眠を起こすのか、糖尿病についての基本的知識、睡眠への影響、原因と適切な治療法についてこの記事で詳しく書いていきます。

糖尿病の基本的なこと 初期症状とその後

糖尿病とは、血糖値を下げるホルモンインスリンがなんらかの原因で分泌されにくくなってしまったり、体がインスリンの効果に対して抵抗を持ってしまったりすることによって起きる病気です。

 

初期症状はあまりなく、無自覚なことが多いです。糖尿病の症状としてはのどが異常に乾く、ご飯を食べたのにすぐお腹が空いてしまう、食後数時間するとだるさを感じるなどです。

 

なぜこのような症状が起きるかというと以下のような原因があります。インスリンの効果が弱まってしまうと高血糖状態が続いてしまい、高血糖状態が長く続くと、血管にダメージが蓄積していきます。

 

その理由は、高血糖状態が続くと血液中の糖分が血管をしなやかにするコラーゲンと結びついてAGE(終末糖化産物)という物質になってしまい、血管のしなやかさが失われてしまうからです。そうなると血管はどんどんダメージを受けやすくなるのです。

 

また、高血糖の状態は血液の成分が濃い状態であり、体は血液の濃さを元の状態に戻そうと水分を大量に摂取しようとします(やたらとのどが乾くようになります)。水分を大量に摂取した結果血液量が増えて高血圧になります。

 

高血圧の状態は、血管に負荷をかけることになるので、これもまた血管がダメージを受ける原因になります。

 

そして目や手足の血管がダメージを受けると、先ほど書いたような失明や手足の壊死、さらには腎臓の毛細血管がダメージを受けるとうまく尿が作れなくなってしまい人工透析を受けなければならない状態にもなってしまいます。

 

糖尿病には、大きく分けて1型と2型の2つのタイプが存在しています。1型は、なんらかの原因で血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する器官が壊れてしまうタイプです。こちらのタイプの糖尿病患者は日本人にはほとんどいません。

 

日本人が糖尿病になった場合、90%以上が2型です。2型は、遺伝的な要因に肥満や生活習慣の悪さが加わって発症します。よく生活習慣病として取り上げられるのはこちらの2型です。

 

 

糖尿病で不眠が起きる?

糖尿病の症状そのものに不眠があるわけではありませんが、糖尿病の症状が原因で不眠が起きることがあります。糖尿病と不眠の関係は研究によっても明らかにされています。

 

医学研究科 代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章(いなばまさあき)教授らのグループは、糖尿病の血糖コントロール悪化で睡眠の質の劣化を伴う睡眠障害が引き起こされること、また睡眠障害が早朝高血圧を起こすことで糖尿病の心血管障害の原因となることを明らかにしました。

以前から、睡眠障害の患者は糖尿病の有病率や将来高い確率で発症することが分かっていましたが、糖尿病の肥満に伴う睡眠時無呼吸症候群の関連は必ずしも明らかではありませんでした。

私たちは今回の研究で、脳波計を用いて糖尿病の血糖コントロール指標であるHbA1c増悪が、睡眠の質を決定する睡眠第1相の時間短縮、さらに、脳を休息させる深睡眠である徐波睡眠の短縮と有意に関連することを明らかにしました。

引用元:睡眠障害が糖尿病の血糖改善や血管障害防止に有効な治療ターゲットであることを解明―大阪市立大学

 

先ほど書きましたとおり糖尿病は、血管がダメージを受ける病気なのでその結果手足がしびれたり、痛みを感じることがあります。単純にそれらの不快感だけでも睡眠が邪魔されます。

 

また、糖分が多量のため濃くなった血液を薄くしようとのどが異様に渇き、その分飲めば尿としてその分体から排出されます。のどの渇きや夜中にトイレに行くために起きてしまうことも不眠の原因になります。

 

また、糖尿病は不眠を引き起こしますが、不眠もまた糖尿病を引き起こします。お互いにお互いを強化しあう関係にあるのです。睡眠不足の人は、睡眠をしっかり取れている人に対してインスリンの抵抗性が高いことが研究結果から明らかになっています。

 

インスリンの抵抗性が高いということは、血糖値を下げるインスリンの効果を受けにくいということなので血糖値が下がりにくい(=糖尿病またはそれに近い)状態で、上に書いた症状が起きて不眠が引き起こされます。

 

高血糖の症状で不眠になってインスリンの抵抗性が高くなる→高血糖が治まらない→不眠が悪化して・・・と負の連鎖が続いてしまいます。

 

 

糖尿病になる原因は?

1型の糖尿病の原因は、まだはっきりと分かっていません。2型の糖尿病は、遺伝的なものが基礎的な原因になってそれに肥満、運動不足、食べ過ぎ、食事バランスの悪さ、不眠症などの様々な生活習慣などの悪さが加わって発症することが分かっています。

 

肥満

肥満の方は、そうでない方よりも脂肪細胞が大きくなっています。脂肪細胞が肥大化すると、体の代謝の過程の一部を邪魔してしまい、インスリンの働きで糖分が筋肉や内臓などに取り込まれにくくなってしまいます。

 

また、脂肪細胞は本来アディポネクチンというインスリンの効果を高める物質を放出しているのですが、脂肪細胞が肥大化するとこのアディポネクチンの分泌が悪くなり、結果的にインスリンの作用が落ちてしまいます。

 

運動不足

運動をすることによって、体内では血液中、筋肉、肝臓などから糖分や脂肪を取り出して、それらがエネルギーに変換されて消費されます。そのことによって、筋肉や肝臓に保存されていた糖分が減ると、食事から摂取した糖分をまた効率よくそこに保存することができるようになります。

 

ところが、運動が不足してしまうと貯蔵されている糖分が使われることが少ないので、その分食事から摂取した糖分をインスリンの効果で上手く取り込むことができなくなってしまいます。そのため高血糖になりやすく、糖尿病の原因になります。

 

ストレス

人はストレスを感じるとまずアドレナリンという物質が出て対応しますが、それが長期に及ぶとコルチゾールというホルモンで対応しようとします。

 

コルチゾールはストレスをやわらげたり、筋肉や肝臓にある糖を血中に戻してエネルギーとして使えるようにする働きを持っています。

 

極度の空腹時には、このコルチゾールの働きによって低血糖を防ぐことができるのですが、慢性的にストレスを受けてしまうとこのコルチゾールの働きで高血糖になってしまうのです。

 

また、それとは別にコルチゾール自体にインスリン抵抗性を高める働きがあり、そちらも糖尿病の原因となってしまいます。

 

不眠症

先ほど挙げたように、睡眠不足の人はインスリン抵抗性がそうでない人と比べて高くなっています。糖尿病の症状が不眠症を起こし、不眠症が高血糖を引き起こすので、この負の連鎖を断ち切らなくてはいけません。

 

糖尿病の検査法

糖尿病は血液検査で空腹時の血糖値やブドウ糖を摂取してしばらくしたあとの血糖値、それに加えて症状の有無から診断されます。

 

やたらとのどや口が乾く、ダイエットしていないのに体重が落ちてきた、疲れやすくなった、足がつりやすくなったなどの症状があり、肥満や長い間ストレスを受けている(仕事など)など思い当たることがあればすぐに内科で検査を受けましょう。

 

 

糖尿病の予防と治療法

検査の結果糖尿病ではなかったとしても、生活習慣の悪さやストレス、肥満などから糖尿病を発症してしまうことは多いので日頃から注意して予防することが重要です。

 

月並みな話となってしまいますが、糖尿病の予防や治療にはやはりバランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠が一番効果的です。食事を気をつければ血糖値が上がりすぎなくなり、運動は血糖値を下げ、睡眠はインスリン抵抗性を改善します。

 

食事は特に血糖値を上げる糖質(炭水化物)の食べ過ぎに注意し、よく噛んで食べることが重要です。たとえば毎日お米をたくさん食べていたのなら夜はご飯のおかわりを禁止にする、ご飯の量を半分にするなどできることから始めていきましょう。

 

運動は忙しいなかだとなかなか難しいですが、休みの日に散歩する、寝る前にストレッチをする、仕事の帰りにはエスカレーターやエレベーターではなく階段を使ってみるなどのことでもやらないよりやったほうが断然効果的です。

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不眠に効く運動はこの程度で十分。軽く動いて疲労しよう。

 

睡眠については、この記事を見てくださっている方は不眠でお悩みの方も多いと思います。もし不眠症の原因が糖尿病ではないのであればストレスや他の病気が原因かもしれません。あわせて他の記事もぜひご覧ください。

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ストレス性不眠をやっつける5つの方法+α

 

糖尿病の予防や治療には上に挙げた3点が基本ですが、1型の糖尿病であることが分かった方はインスリンの絶対量が足りないので、インスリン注射を定期的にして血糖値を下げなくてはいけません。2型の方の場合でも生活習慣を正してもそれで足りない場合はインスリンを直接注射する治療が必要です。

 

また、血糖値の上昇速度をゆるやかにする、余分な糖分を尿から排出させる効果のある治療薬もあるので、場合によってはそのような薬を使用することもあります。病院で医師の助言のもと治療を行いましょう。

 

コラム:糖尿病に睡眠薬が有効?! NHKの「ガッテン!」でやってたけど

2017年2月22日にNHKの情報番組「ガッテン!」で睡眠薬が糖尿病に有効だという内容が放送されました。もうご存知の方も多いかもしれませんが、多くの専門家が批判しているとおりこの内容は飛躍していて、睡眠薬の不適切な使用を助長しかねないものでした。

 

内容はベルソムラという睡眠薬が糖尿病に有効であるというものでした。睡眠と糖尿病には上で書いたように関係性があり、不眠が続くとインスリン抵抗性が上昇し、糖尿病になるリスクがあります。

 

そのため睡眠薬を用いることで睡眠が改善されれば、結果的に糖尿病になるリスクが減ることはあります。しかし睡眠薬はあくまでも不眠を改善するための薬なので、それ自体に糖尿病への効果があるわけではありません。

 

まとめ

糖尿病といえば、尿から甘い匂いがしてきて食べても食べても痩せる、失明や手足の壊死などおそろしい症状のある生活習慣病ですが、不眠症を起こす原因にもなります。

 

それは糖尿病によって起こる高血糖の状態が、手足のしびれや異常なのどの渇き、多尿を引き起こし、それらが睡眠の質を悪化させてしまうからです。

 

糖尿病は、血液中の糖分を筋肉や肝臓などに取り込むインスリン自体が分泌されなくなったり、量が少なくなる1型とインスリンの働きが悪くなる2型の2種類があります。日本人の方で糖尿病の場合は、ほとんどのが2型の糖尿病です。

 

2型の糖尿病の原因は、遺伝的なものが基礎的な要因になりますが、それに肥満、運動不足、慢性的なストレス、不眠症などが加わって発症してしまいます。

 

やはり糖尿病の予防、治療にはバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠が必要です。それでも足りない場合にはインスリン注射、血糖値をコントロールする薬による治療も必要なので、病院で専門の医師のもと治療を受けましょう。