認知症と不眠

今回は、不眠症の原因である可能性のひとつとして認知症を取り上げます。いわゆるネット世代といわれる20~30代の人にはあまり縁のない話かもしれません。

 

認知症は、かつては痴呆(ぼけ)とも言われた病気で高齢者に多い病気です。ただし、若年性認知症という50代くらいでも発症してしまう認知症があるため、早期発見や予防が重要です。

 

もしかしたら初期の自覚症状が出ている場合もあります。自覚症状が出たときにすぐに可能性を疑えるように、また家族の方で認知症の可能性を疑えるように、認知症について詳しく知っておきましょう。

認知症とは?

おさらいですが、認知症とは脳の一部に障害が発生して、認知や知能が低下してしまう病気です。脳の神経細胞が破壊されることによってこれらの症状が起きるようになり、一度低下した知能は元に戻ることはありません。だからこそ予防や早期発見・早期治療が非常に重要な病気です。

 

歳を取ることで増えるただの物忘れとは違うのでしっかりと区別する必要があります。

 

認知症は高齢者に多いですが、50代の方でも発症することがあり、これを若年性認知症と言います。意外と早く認知症になる可能性は出てきますので、まだまだ先のことと考えずに早め早めに対処法を知っておきましょう。

 

認知症には主な症状である中核症状とそれにともなっておきる周辺症状の2種類があります。具体的な例は以下のとおりです。

 

中核症状

記憶障害

たとえば、昨日の食事で何を食べたか忘れる、予定をうっかり忘れてしまうなどは通常の物忘れで認知症の記憶障害ではありません。認知症では、食事をしたこと自体を忘れる、予定を入れたこと自体を忘れるなど体験そのものを忘れてしまいます

 

見当識障害

時間や日付が分からなくなる、今自分がどこにいるのか分からなくなる、家族や友人が誰だか分からなくなるなどの症状が起きます。

 

認知機能の低下

数を計算するのが苦手になる、判断力や物事の理解力が遅くなる、言葉が出てこなくなるなどの症状があります。

 

周辺症状

中核症状は、認知症の方の共通して起こる症状ですが、周辺症状は人によって起きたり起きなかったりするものがあります。周辺症状には幻覚、妄想、徘徊、うつ状態、漠然とした不安、不眠、暴言、暴力などがあります。これらの複数の症状が同時に起こることもあります。

 

昔は優しかった人が急に暴言や暴力を振るうようになったり、明るくてあっけらかんとした人だったのが不安症になったり、うつ症状が出ている場合は注意が必要です

 

 

認知症と不眠の関係

認知症には、周辺症状のひとつとして不眠症が起きます。歳を取ることによって自然な眠りを起こすホルモンメラトニンの分泌量が低下するので、高齢になるほど睡眠時間や睡眠の質は自然に低下してしまうのですが、認知症の場合は脳細胞が破壊されることによってより重い不眠症が出ることがあります。

 

不眠症といっしょに上に書いたような中核症状が現れるようであれば、認知症を疑う必要性があります。

 

 

認知症の分類

認知症には実は大きく分けて4つの種類があります。認知症の種類によって出やすい症状や特徴が異なりますので、それぞれの特徴について見ていきましょう。

 

アルツハイマー型認知症

認知症の半分以上の割合をしめており、男性よりも女性に多い傾向があります。脳内にアミロイドβという特殊なたんぱく質が溜まって、それが脳の神経細胞を破壊してしまうために起こります。

 

脳血管性認知症

脳血管のトラブルによって脳がダメージを受けることによって起こります。女性よりも男性に多く、アルツハイマー型認知症と併発していることもあります。脳血管性認知症を起こすトラブルには、脳内出血、脳梗塞、くも膜下出血などがあります。

 

 

血管の問題で壊れている細胞と正常に働いている細胞があるので、認知症の症状がまばらになることがあります。記憶障害は起きているが判断力は低下していない、意欲があってしっかりと物事を進めるときもあればそれができないときがあるなどです。

 

 

レビー小体型認知症

脳内にレビー小体という特殊なたんぱく質が集まり、それが脳細胞を壊してしまうことで認知症が起きます。レビー小体型認知症に特徴的症状は幻覚や妄想です。それらが起きる理由は、視覚をコントロールしている脳細胞の部分が集中的に壊れてしまうからです。物忘れよりも先に幻覚や妄想の症状が出ることもあります。

 

また、パーキンソン病といわれる安静時に手足がふるえたり、筋肉がこわばって体が動きにくいなどの症状が出ることがあります。

 

 

前頭側頭型認知症

脳のなかでも前頭葉や側頭葉と呼ばれる場所が萎縮してしまうことによって症状が起きます。前頭葉は感情をコントロールしており、側頭葉は言語を理解する能力をコントロールしています。そのため前頭側頭型認知症では、感情や言葉をコントロールできなくなって、身勝手な行動や暴言などの反社会的な行動が出やすくなります。

 

 

初期の自覚症状

認知症は、明らかに日常生活に問題が出るレベルの症状が出る前から少しずつ症状が出始めていることが分かっています。初期の自覚症状でもしかしたら・・・?と思ったら恥ずかしいと思わずに、病院に行って専門の先生に相談しましょう。

 

症状が進んで、友人や家族、子ども、お孫さんの顔も思い出せなくなってからでは、もう時既に遅しといった状態になってしまいます。以下に引用ですが、チェック項目を記載いたします。

 

以下の症状のうち8割以上があてはまる場合は「病気による物忘れ」の可能性が高いと考えられます。

 

  • 何度も同じ話を繰り返したり、聞いたりするが、同じ話をしているという意識の無い状態。
  • 知っているはずの人の名前が思い出せない。
  • 物がしまってある、もしくはしまった場所を忘れてしまう。
  • 漢字を忘れてしまう。
  • たった今しようとしていることを忘れてしまう。
  • 器具などの説明書を読むのが面倒。訳も無く気持ちが落ち込んでしまう。
  • 自分の身だしなみに関心を払わなくなった。
  • 外出がおっくう。
  • 財布などの物が見当たらないと他人のせいにしてしまう。

 

認知症チェック項目

  1. 今日の日付が思い出せないことがある
  2. 最近の出来事を思い出せない。時間や場所の感覚が不確かになった。
  3. 同じことを何度も言ったり聞いたりする
  4. 物をどこに置いたのか忘れることがある。置き忘れやしまい忘れが目立ってきた。財布などを盗まれたという。
  5. 前に買ったことを忘れ、同じ物をたびたび買うようになった。
  6. ガス栓の締め忘れで鍋を焦がしたり、水道の止め忘れが目立つようになった。
  7. 物の名前が出てこなくなった。
  8. 身だしなみを構わず、だらしなくなった。決まった日課をしなくなった。
  9. 通いなれた道なのに迷うことがある
  10. 生活への意欲が低下している。趣味や楽しみに興味や関心がなくなった。引きこもることが多くなった。
  11. 簡単な計算なのに手間取ったり、間違えたりする。買い物をしたときにお金の計算ができない。
  12. 使い慣れた道具の使い方が分からなくなった
  13. ささいなことで怒りっぽくなった。

以上のうち3つ以上当てはまる場合は、認知症の可能性があります。

 

引用元:認知症 アルツハイマー病を中心として(http://www.yamamotoclinic.jp/dir27/

 

 

認知症の診断方法

主に上に書いた中核症状のうち、記憶障害と認知機能の低下が見られる場合に認知症と診断されます。日本ではよく簡易的な判断基準として長谷川式認知症スケールというものが使われます。

 

物の名前、現在自分がいる場所についての質問、引き算などの質問から最大30点満点で認知症リスクを判断します。20点以下の場合は認知症の可能性がありますが、これだけで認知症を診断することはありません。

 

認知症の症状で、認知機能の低下や不眠、不安などの症状がありますが、これはうつ病と似ている症状なので、区別することが必要です。

 

うつ病の場合は、一日のうちに朝方に症状が重く、夜に近づくにつれて症状が軽くなってくる特徴があります。また、記憶障害や認知機能の低下よりも憂うつ感や罪悪感などの症状が強ければ、うつ病の可能性があります。

 

 

認知症の治療法

認知症の治療には主に、現在まだ失われていない脳機能を維持するリハビリテーションと病状の進行を食い止める薬を飲む薬物療法の2種類があります。

 

リハビリテーション

リハビリテーションでは、体を動かしながら、考えることで脳を刺激して、脳機能を活性化させることが重要です。料理をする、なにか物を作るなどの行為や趣味、人とコミュニケーションを取りながらなにかするということがリハビリにとても良いです。

 

薬物療法

認知症の進行を食い止める薬は、現在いくつかの種類があり、働きや向いている人が異なるので、その人に合ったものを使うことが重要です。商品名(有効成分名)といった形で紹介します。

 

アリセプト(ドネペジル)

アルツハイマー型、レビー小体型認知症に有効な薬です。認知症の方は、記憶に関わる神経伝達物質であるアセチルコリンが低下していることが分かっています。アリセプトは、アセチルコリンを分解する酵素の働きを邪魔することで、結果的にアセチルコリンの働きを強化します。

 

 

メマリー(メマンチン)

中程度から重度のアルツハイマー型認知症に有効な薬です。体のなかで興奮系のシステムをコントロールしているグルタミン酸の過剰な働きを抑えます。

 

グルタミン酸の働きが過剰になると、グルタミン酸が脳細胞を破壊してしまいます。メマリーは、グルタミン酸の過剰な働きを抑えることで脳細胞の破壊を食い止めて、認知症の進行を遅くします。アリセプトとは異なるメカニズムなので、併用することができます。

 

 

レミニール(ガランタミン)

アルツハイマー型認知症に有効な薬です。アリセプトと同じくアセチルコリンを分解する酵素の働きを邪魔するほかに、脳内でアセチルコリンの感受性を高めることでダブルの効果でアセチルコリンの働きを高めます。アリセプトと併用することはできません。

 

 

リバスタッチパッチ(リバスチグミン)

軽度~中程度のアルツハイマー型認知症に有効な貼り薬です。アリセプトと同じくアセチルコリンを分解する酵素の働きを邪魔します。アリセプトと併用することはできません。

 

 

まとめ

認知症は、症状のひとつとして不眠症を起こすことがあります。高齢者だけがなるものではなく、50代から発症してしまう若年性認知症もありますので、症状を知って早期発見・早期治療・予防をすることが大切です。

 

認知症は高齢者に多いアルツハイマー型、脳梗塞などの血管系トラブルで起こる脳血管性、幻覚や妄想が特徴的なレビー小体型、前頭葉や側頭葉が萎縮することで問題行動などが起きやすい前頭側頭型の4タイプがあります。

 

それぞれに特徴的な症状はありますが、中核的な症状は記憶障害、見当識障害、認知機能の低下の3つです。ただの物忘れとは違って、やったこと自体を忘れる、予定を入れていた事自体を忘れる、日時や自分がいる場所が分からなくなる、身近な人の顔が分からなくなるなどの症状が起きます。

 

物の名前が出てこなくなったり、同じ物を何度も買ってきてしまったり、昔はそうじゃなかったのに迷子になりやすくなったなどの症状があるときは、初期症状かもしれませんので恥ずかしがらずに病院に行って検査をしてもらいましょう。取り返しがつかないことになる前に。

 

認知症は進行性の病気で、一度低下してしまった記憶能力や知能などは戻ってきません。治療法には今ある機能を維持するためのリハビリテーションと症状の進行を抑える薬物療法の2種類です。どちらも専門医の助言のもと行いましょう。