境界性パーソナリティ障害で眠れない

ボーダー、ボダなどの言葉を聞いたことはありますか?

これは境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)という病気のことです。

境界が英語でボーダーということからこのように呼ばれることがあります。

 

実はこの境界性パーソナリティ障害が不眠の原因になることがあるのです。

境界性パーソナリティ障害の方は、物事のとらえ方にゆがみがあり、強烈な不安や孤独感から不眠を併発することが珍しくありません。

 

こちらの記事で境界性パーソナリティ障害とはどんな病気か、原因と診断方法や間違えやすい他の病気、治療法について詳しく見ていきます。

境界性パーソナリティ障害ってどんなもの?

境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)は、物事のとらえ方や対人関係の形にゆがみがあり、感情の起伏が激しく、周囲の人を振り回すなどして自分も周りの人も疲れ果ててしまうなどの特徴がある病気です。

 

具体的には、以下のような症状や行動があります。

 

感情の起伏が激しい、不安定

さっきまで気分が良いと思っていたら、急に不安、憂うつになったり、いらいらしたりして感情がコントロールできずに家族や友人、恋人に激しい感情をぶつけてしまうことがあります。

 

対人関係の形のゆがみ

人との関係を自分が相手より上か下かだけで考えていたり、自分の思い通りに人を動かそうとしたりします。

 

自己評価が低い

自分は生きていていいのか常に疑問を持っていたり、生きている価値がないと思っていることがあります。

なにをやってもいつも失敗ばかりで、他の人に迷惑をかけていると思っていることもあります。

 

1か0かの二極思考

物事をほどほどで考えられずに、ひとつ悪いことがあると他のあらゆることも最悪最低に思ってしまいます。

たとえば、

 

「あの人とさっき話したときに変なことを言ってしまった。少し嫌そうな顔をしていたし、もう嫌われてしまったに違いない。私は生きる価値がない」

「テストで90点しか取れなかった。100点以外は意味がない。自分はなんでこんなに頭が悪いんだろう」

「今日仕事でミスをした。私は会社の足を引っ張るお荷物だ。生きている意味がない」

などです。

 

思い込み(先取り)、被害妄想

人の感情を勝手に先取りして思い込んだり、それが被害妄想になったりします。

たとえば「あの人は私のことを嫌っている(のではないかと自分が思っている)」ことと実際に「その人が私のことを嫌っている」ことをごっちゃにしてしまいます。

 

解離、離人感

自分が自分でないような感覚になります。

ゲームのキャラクターを動かしているように自分を上や背後から見ているような感覚になったり、意志のある自分じゃなくて自動的に「私」が動いているたり、しゃべっているような感覚になります。

 

1枚の膜に体全体が包まれているような感じがして、膜越しに触ったり音を聞いたり物を見ているような感覚と表現されることもあります。

 

理想化とこきおろし

好きな相手のことなどを過度に美化して、この人は私のことをいつでもどんなときでも守ってくれる、優しくしてくれる、私の思い通りにしてくれるなど思ってしまうのが理想化です。

依存しているともいえます。

 

また、逆にその相手が自分の意志にそぐわないことをしたり、自分のわがままを許してくれないときなどには逆になんて最低なやつだ、最悪なやつだ、私のことが嫌いなんだなどと極端にこきおろしたり、激しく怒ります。

 

理想化した相手への期待が裏切られて自分が傷つかないように、心のなかで相手の価値を落として「こいつはこの程度のやつなんだ」と思って自分を守るのです。

 

自傷行為

リストカット、薬物乱用(オーバードーズ)などで自傷行為をします。

自分に罰を与えるという目的だったり、自分を傷つけて生きているという感覚を得る、誰かの気を引くためといった目的で行われます。

 

性的逸脱(誰かれ構わず性交渉してしまう)もまた、自分を乱雑に扱う行為で広い意味での自傷行為にあたります。

 

試し行為

人の嫌がる行為やわざと自分の価値を下げるような悪い行いをして、相手が自分を見限らないか、嫌わないかを確かめようとします。

たとえば、

  • 浮気や不倫をわざとしてそれをパートナーに伝えて反応を見る
  • パートナーの嫌がる行為をして、自分のことを嫌わないか確認する

 

などです。

一度これらを行って相手が自分のことを許してくれたり、嫌いにならなかったとしても「じゃあこれくらいはどうかな? これよりもう少し嫌なことをしたら? もう1回やってみたら?」と思って、どんどんエスカレートしていきます。

 

結局相手が耐えられる限界を超えるまでエスカレートするので、最終的には恐れている「見捨てられてしまう」ことに自分から誘導してしまいます。

 

その他にも

  • 不眠
  • 抑うつ状態
  • 依存体質(アルコール、ギャンブル、買い物など)
  • 過食、拒食症

などの症状があります。

 
これらの症状や行為を見てあてはまったり、身近にそういう人がいるという方もいらっしゃるでしょう。

境界性パーソナリティ障害は、男性よりも女性に多い病気で、特に10代~20代の若年層に多いです。

 

人格障害という名前から勘違いされることが多いのですが、境界性パーソナリティ障害は、「性格が悪い」ということではありません

脳の働きに一部の異常が起きて、このような症状や行為が起きているのです。

 

境界性パーソナリティ障害の方の症状や衝動的な行動の根本にあるのは自分が信頼している人に見捨てられてしまうことへの不安です。

この不安を解消するために上に書いたような様々な行動を行ってしまうことがあるのです。

 

 

境界性パーソナリティ障害の原因はなに?

先ほど書いたように境界性パーソナリティ障害の原因は、遺伝や子どもの頃の家庭環境だと考えられています。

 

両親のどちらかが境界性パーソナリティ障害である場合、そうでない親と比べて子どもが境界性パーソナリティ障害を発症する確率はそうでない5倍になるという研究結果があります。

 

育った環境については、境界性パーソナリティ障害の方の91%が子どもの頃に虐待を受けていたことが分かったアメリカの研究があります。

 

さらに、複数の調査で境界性パーソナリティ障害の方の家庭では、子どもの頃親と長期間離れ離れになったり、父親がいないまたは子育てに非協力的、親が子どもを放置することがあったり逆に過干渉であったり、支配的であったという特徴があると指摘されています。

 

また、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、境界性パーソナリティ障害はアダルトチルドレンと呼ばれる人々と共通の特徴を持っています。

イコールではありませんが、アダルトチルドレンの方の生育環境は境界性パーソナリティ障害を発症しやすい環境です。

 

なぜなら、アダルトチルドレンの方々もまた親の虐待や放置、過干渉、支配など育ってきた環境のせいで自己価値が極端に低く、自分の生きる意味を失ってしまうことが多いからです。

アダルトチルドレンについては別の記事で詳しく書いておりますので、ぜひご覧ください。

関連記事:あなたの不眠はアダルトチルドレンが原因? 生きやすくなる方法

 

境界性パーソナリティ障害の方の研究では、感情を生み出す脳内ホルモンセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンの働きが一部過剰であったり低下しているケースがあります。

 

さらに人間の感情をコントロールしている脳の前頭前野や扁桃体と呼ばれる場所の機能が低下していたり、記憶をつかさどる海馬という部分の機能が低下していることも研究で分かっています。

 

このように境界性パーソナリティ障害は、性格が悪いという問題ではなく、脳の障害だということがわかります。

そのため治療法のひとつとして薬による治療があるのです。

 

 

境界性パーソナリティ障害の診断と間違えやすい病気について

境界性パーソナリティ障害は、他の精神疾患とならんで非常に診断が難しい病気です。

なぜなら境界性パーソナリティ障害の症状は、うつ病、躁うつ病、統合失調症、パニック障害、アスペルガー症候群、ADHD、PTSDといった精神疾患などと共通している症状が多いからです。

 

これらの病気は併発していることもあるので、それがさらに診断を難しくしています。

そのため専門の精神科医であっても1回の診察だけでこれだ!と確定するのは難しく、何度か診察して症状や様子を見てこれかな?と推定していきます。

世界保健機関(WHO)の診断基準(ICD-10国際疾病分類)では、以下のとおりです。

(前略)

感情の不安定さを伴い、結果を考慮せず衝動に基づいて行動する傾向が著しいパーソナリティ障害。あらかじめ計画を立てる能力にきわめて乏しく、強い怒りが突発し、しばしば暴力あるいは「行動爆発」にいたることがある。

これらは衝動行為が他人に非難されたり、じやまされたりすると容易に促進される

(中略)

境界型(F60.31)
情緒不安定ないくつかの特徴が存在し、それに加え、患者自身の自己像、目的、および内的な選択(性的なものも含む)がしばしば不明瞭であったり混乱したりしている。

 

通常絶えず空虚感がある。激しく不安定な対人関係に入りこんでいく傾向のために、感情的な危機が繰り返され、見捨てられることを避けるための過度な努力と連続する自殺の脅しや自傷行為を伴うことがある(しかしこれらは明らかな促進因子なしでも起こりうる)。

引用元:境界性人格障害、情緒不安定性障害|人格障害講座|犬のワトソン

 

 

境界性パーソナリティ障害と不眠の関係性

ここでタイトルに戻りますが、不眠は境界性パーソナリティ障害にある症状のひとつです。

実は境界性パーソナリティ障害が不眠を悪化させ、不眠が境界性パーソナリティ障害を悪化させるというお互いに悪影響を及ぼすことが指摘されています。

 

 Edward A. Selby氏は、境界性パーソナリティ障害(BPD)と睡眠障害の関連について、レトロスペクティブに検討を行った。

(中略)

本研究で著者は、パーソナリティ障害と睡眠障害について評価している(NCS-R)Part IIの母集団(Kessler & Merikangas、2004のデータ[5,692例])を解析し、慢性睡眠障害の程度(入眠困難、睡眠維持困難、早期覚醒)と、その結果としての浅眠について検討した。

(中略)

主な結果は以下のとおり。

・BPDは、慢性の睡眠に関連する3つの問題すべてと有意に関連しており、その結果として不眠症とも関連していた。

・BPDと睡眠の問題との関連の程度は、従来より示されているAxis I障害と睡眠の問題との関連の程度に匹敵するものであった。

・BPDの症状は慢性の睡眠の問題と相互に作用し、社会的感情障害、認知障害、自己管理障害に関連していることが予測された。

・以上より著者は、「睡眠障害とBPD症状との間には一貫した関連がみられ、日中の浅眠につながっている。そして浅眠によりBPD症状が悪化するという悪循環が、高レベルの機能障害につながっている」

とまとめ、「BPD患者の睡眠状況を日常的に評価すべきであり、慢性の睡眠問題の解決は、感情コントロールの改善、治療スキルの実施を通して治療の向上につながる可能性がある」と考察している。

 

引用元:境界性パーソナリティ障害と睡眠障害は密接に関連

 

 

境界性パーソナリティ障害やそれにともなう不眠への対処法は?

先ほど書いたように境界性パーソナリティ障害と不眠には関係があり、境界性パーソナリティ障害の治療を行うことが不眠への対処にもなります。

 

治療法としては、躁うつ病や統合失調症といった精神疾患とは異なり、精神療法がメインになります。

あくまで薬は補助的に症状を抑えるために使われます。

 

境界性パーソナリティ障害の特徴として30代くらいになると、自傷行為や対人関係の問題などの表面的な問題は治まっていくことがわかっています。

ただし、それでも自己評価の低さや抑うつ感などは続くため、治療は続けていかなければなりません。

 

先に知っておいていただきたいのは、精神療法による治療で目に見える効果が出るまでには1年以上の長い時間が必要だということです。

すぐに効果が出ないからと中断せずに、生きやすくなるためにはじっくりと向かいあっていきましょう。

 

境界性パーソナリティ障害の対処法や治療法には、以下のものなどがあります。

 

寂しさをやわらげるために、ぬいぐるみを抱きしめよう

境界性パーソナリティ障害の方の辛さや衝動的な行動は、見捨てられてしまうという不安や寂しさ、孤独感から来ています。

 

あなたの家にぬいぐるみはありますか?

ばかばかしいと思うかもしれませんが、ぬいぐるみを抱きしめることであなたの寂しさをやわらげることができます。

 

人やペットとスキンシップを取るとオキシトシンというホルモンの分泌が促進されます。

オキシトシンにはリラックス効果やスキンシップを取った相手との信頼性を高める効果があるのです。

実はこのオキシトシンはぬいぐるみを抱きしめるだけでも分泌されることが分かっています。

 

寂しくて辛いとき、頼れないとき、ぬいぐるみを抱きしめることである程度辛さが軽くなります。

ぜひ試してみてください。

関連記事:

寂しくて眠れないときはハグしよう! オキシトシンが与える良い効果

 

 

認知行動療法

認知行動療法は、認知療法と行動療法を組み合わせた精神療法です。

認知とは、物事をどのようにその人が捉えるかということです。

 

認知療法では、境界性パーソナリティ障害の方が物事をネガティブなレンズを通して見ることで感情が不安定になりやすくなることに注目し、ネガティブなレンズを外して物事をありのままに捉えられるようにします。

 

行動療法では、嫌な感情や破壊衝動などに対する解決策としての行動(たとえばリストカットや気を引くために試し行為をする)を変えます。

自分や周りを傷つけない行動で自分の嫌な感情をすっきりさせられることを学習していきます。

 

弁証法的行動療法

弁証法的行動療法は、認知行動療法をもとに境界性パーソナリティ障害に特化させた治療法です。

この治療法では自分の偏った物の捉え方や感じ方を変えることと、変えずに受け入れることの両方のバランスを重視します。

 

対人関係を保つ、感情を調節する、辛いことに耐えられるスキルなどを訓練したり、自傷行為をお行いそうになったら電話で治療者に連絡を取ることで「自傷行為を行わない」ことを体に学習させるなどします。

 

睡眠薬や抗不安薬、抗うつ薬などを使う

抗うつ薬や統合失調症の治療に使われる抗精神病薬、躁うつ病に使われる気分安定薬という薬は、境界性パーソナリティ障害のネガティブな感情や衝動的な行為を減らすのに役立ちます。

境界性パーソナリティ障害の治療の補助として以下の薬などが使われます。

 

被害妄想、幻聴、衝動的行為に

  • 抗精神病薬(リスパダール、ルーラン、ロナセン、セロクエル、ジプレキサ、エビリファイなど)
  • デパケン

 

憂うつ感、不安、情緒不安定に

  • 抗うつ薬(ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフト、レクサプロなど)
  • リボトリール    
  • リチウム

 

これらの薬はあくまで激しい症状を抑えるために一時的に使うべきであって長期間服用すべきではありません。

精神療法のサポートとして使います。

また、薬は境界性パーソナリティ障害の根本にある孤独感、見捨てられ不安、虚しさにはあまり効果がありません。

 

できれば薬を使いたくない・・・こんなときは睡眠サプリを使ってみる

実はサプリメントのなかには、睡眠をサポートしてくれるものがあります。

境界性パーソナリティ障害の方が眠れなくなる原因になるストレスをやわらげてくれるGABA(ギャバ)や寂しさをやわらげてくれるセロトニンの材料(トリプトファン)などを補給してよく眠れないのをサポートしてくれます。

 

薬とは違って副作用もないですし、依存する危険性もありません。

おすすめは実際に不眠だった妻が使ってみて良かったグッドナイト27000です。

使ってみたレビューも別の記事で詳しく書きましたので、ぜひご覧ください。

眠れた? 不眠の妻がグッドナイト27000を使ったレビュー+成分や副作用は?

 

 

まとめ

境界性パーソナリティ障害は、友人や恋人など周りの人に見捨てられてしまうのではないかという不安から、感情が不安定で衝動的な行為を起こしてしまいます。

また、そのような不安や孤独感から不眠を引き起こす原因になります。

 

これらは遺伝や小さい頃の家庭環境に原因があると考えられており、感情をコントロールする脳の扁桃体や前頭前野といった部位の機能が低下していたり、脳内ホルモンのセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンの働きが低下していることが分かっています。

 

人格障害という名前で、性格が悪い人だと勘違いされてしまいがちですが、このように脳の機能になんらかの異常が起きることによって感情の不安定さや衝動的行為が起きているので、個人の努力でどうこうするものではありません。

 

治療法には、精神療法と薬物療法の2種類がありますが、基本的には精神療法での治療が行われます。

薬は、症状が重いときに避難的に使うべきであって長期間使うべきではありません。

 

精神療法では、認知行動療法などの方法で境界性パーソナリティ障害の方が持っている物事、対人関係の捉え方のゆがみを見直して自己価値の低さなどを改善します。

どちらも専門の医師のもとで行う必要があるので、個人でなんとかしようとするのではなく、必ず精神科、心療内科、メンタルクリニックなどの専門医に頼りましょう。