双極性障害の治療薬と不眠

不眠の症状がある病気として以前双極性障害(躁うつ病)について別の記事で紹介いたしました。

うつ病? 実は「躁うつ病」かも?

 

この記事では、双極性障害の治療に使われる基本の薬の一覧とそれぞれの効果・副作用・不眠への効果を詳しく書いていきます。

双極性障害の薬の種類一覧と特徴、副作用

双極性障害の治療のために使われる基本的な薬は気分安定薬と言われます。

その名のとおり、躁やうつの気分の波を安定させて、症状を抑えたり、予防する力を持っています。

 

気分安定薬は双極性障害の治療には絶対に必要です。

以下で薬の名前(有効成分名)という形で紹介していきます。

リーマス、リチオマール(リチウム)

リーマスは、双極性障害の治療薬としてまず一番目に選択されることが多い薬です。

躁うつ病の薬として最も古い歴史と実績があるからです。

1800年代にはすでに海外で、うつ症状への効果が確認されています。

 

リーマスには脳の神経細胞を毒素から保護したり、脳の神経細胞が新しく生まれたり、傷を修復するために必要な栄養素であるBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質の濃度をアップさせる効果があり、双極性障害の症状や予防に有効です。

 

そのほかにも詳しいメカニズムは分かっていないですがリーマスには自殺予防効果があることが分かっています。

リーマスには衝動的な行為を抑える働きがあるので、衝動的に自殺に走ることをとめてくれるのです。

 

 

デパケン、サノテン、バレリン、セレニカなど(バルプロ酸ナトリウム)

たくさん名前がありますが、全部同じ有効成分の薬です。

リーマスの次に選択されやすい薬です。

その理由はリーマスや他の気分安定薬に対して副作用が少ないからです。

 

ただ、デパケンはリーマスよりうつ状態の治療には効果が低く、代わりに躁状態の治療効果が高いです。

デパケンは、体のなかで鎮静作用をあたえるGABAという物質が分解されることを防ぐので、神経の過剰な興奮を抑えます。

その結果躁状態を改善することができるのです。

 

躁状態が重ければ重いほど、長ければ長いほど、そのあとにくるつ状態は反動で大きくなります。

そのため躁を抑えることができれば間接的にうつの症状も抑えることができます。

 

 

ラミクタール(ラモトリギン)

ラミクタールは他の気分安定薬に対して、双極性障害のうつ症状に強いという特徴を持っています。

双極性障害の方が抗うつ薬を服用すると、気分が上がりすぎて逆に躁になってしまう(躁転)危険性があるので、抗うつ薬はあまり使いたくありません。

 

リーマスやデパケン、この後に説明するテグレトールも躁を押さえ込む力は強くてもうつを持ち上げる力が弱かったので、これまで双極性障害の方のうつ症状を躁転を起こさずに治療する有効な方法がありませんでした。

 

2011年にようやく日本でもラミクタールが双極性障害の治療薬として認められたので、双極性障害のうつ症状を躁転を起こさずに治療することができるようになったのです。

 

ラミクタールは、神経の興奮をコントロールしているナトリウムチャネルという場所に作用して神経の過剰な興奮を抑えて躁状態を改善します。

そのほかにも、ナトリウムチャネルと同じく神経の興奮作用を持っているグルタミン酸のシステムに働きかけて躁状態を抑えます。

 

他の双極性障害の基本薬よりもなぜうつに有効なのかは完全には分かっていませんが、グルタミン酸の働きを抑えることで神経へのダメージを少なくすることなどが理由ではないかと言われています。

 

 

テグレトール、レキシン(カルバマゼピン)

テグレトールは、他の気分安定薬を使って効果が薄かったときに使われる選択肢です。

第一選択肢には上がりません。なぜなら、危険な副作用が出るおそれが他の薬よりも高いからです。

 

テグレトールは、ラミクタールと同じく神経の興奮をコントロールしているナトリウムチャネルという場所に働きかけて、神経の過剰な興奮を抑えます。

デパケンと同じでうつへの効果はあまりありません

 

 

どの気分安定薬が私に向いているんだろう?

双極性障害に使われる基本薬は、人によって向き不向きがあります。

副作用だけでなく、こういうタイプの人にはこの薬が合うというのが分かっているのです。

薬ごとの違いについて詳しく見ていきましょう。

 

リーマスが向いている人

リーマスは、躁のときに気前が良くなったり、普段はなんでもないことがとても楽しくなったり、わくわくする人や家族に双極性障害の方がいる人(遺伝の関係です)に効果的です。

 

躁とうつのサイクルがしっかりと分かれている人に、より有効だと言われています。

ですがリーマスは使用量がデリケートでちょっと多いだけですぐに副作用が起きてしまうので、頻繁に血液検査をして血中濃度を測る必要があります。

 

 

デパケンが向いている人

躁のときに行動力は上がるものの、いらいらするタイプの方に向いています。

また、躁とうつの症状が1~2ヶ月やもっと短い期間で交代してしまう急速交代型(ラピッドサイクラー)と呼ばれるタイプの方、躁とうつの混合症状(気力はあるのに体がついていかないなど)がある方に有効です。

リーマスと違って血中濃度をしょっちゅう測る必要はありません。

 

 

ラミクタールが向いている人

長く続くうつ症状を持ち上げたい方に向いています。

双極性障害は元々躁よりもうつの期間が長いため、リーマスやデパケンと併用してうつを持ち上げるために使われることもあります。

 

デパケンと併用する場合は、血中濃度が上昇してしまうので通常の半分の量を使用しなければなりません

リーマス、デパケン、テグレトールと比べると躁を抑える力は弱いです。

 

 

テグレトールが向いている人

実はテグレトールはあまり選択されない薬だったりします。

他の気分安定薬の効き目がいまいちな方が選択します。

躁を抑える力は強めです。

デパケンと併用する場合は、血中濃度が下降してしまうので、通常の倍の量を使用しなければなりません

 

 

気分安定薬が睡眠へ与える影響は? 不眠に効く?

これまで紹介した薬のうち、デパケン、テグレトール、ラミクタールについてはどれも脳の過剰な興奮を抑える働きがあるため副作用として眠気を持っています。

リーマスには眠気の副作用はありません。

 

双極性障害の方は、躁状態でもうつ状態でも不眠に悩まされることがありますので、そういった面から考えても気分安定薬は双極性障害にとても有効ですね。

 

 

それぞれの薬の使用量について

リーマス

200mg~800mgと人によって有効な量にかなり幅があります。

躁状態が強いときには多めに使われることもありますが、何度も血中濃度を確かめたり、副作用の程度を調べてその人にあった量を確かめなければなりません。

 

デパケン

躁状態が強いときには600mg~800mg程度が使われ、予防や安定期には400mg程度が使われます。

リーマスほど頻度は高くありませんが、病院によって3ヶ月~半年程度に1回血液検査で血中濃度を測ることがあります。

 

どれくらいの血中濃度が目安なのかは、以下の研究内容を参考にしてみてください。

血中濃度に関して、急性効果は50μg/mlを超えて出現し80μg/ml以上が必要であると考えられた。これに対して維持療法期は、概ね45-60μg/mlが適切なレベルとなる可能性が推定された。

引用元:双極性障害に対するバルプロ酸の有効性および用法・用量に関する検討

 

現在躁状態ではなく、安定期を維持している場合は45~60μg/ml程度で、躁状態が疑われるようになったらもっと量を増やす必要があります。

 

ラミクタール

25mgから開始し、100mg程度まで増量できます。

場合によっては12.5mgの量から開始することもあります。

この薬はデパケンやリーマスとは違い、必ず低い量から始めなくてはなりません。

 

いきなり多い量を使うと、スティーブンス・ジョンソン症候群という死亡率の高い副作用が起きてしまう可能性があるからです。

低い量から開始して、2週間ごとに少しずつ量を上げていく場合ではこの副作用が出た例はありません

 

デパケンと併用する場合は、効果が倍増してしまうため、上に挙げた半分の量で増薬していかなければなりません。

 

 

テグレトール

200mgから開始し、600mg程度まで増量できます。

いきなり多い量を使用してしまうとラミクタールと同じくスティーブンス・ジョンソン症候群の副作用が起きてしまう可能性があるため、少ない量から増量しなくてはなりません。

デパケンと併用する場合は、効果が半減してしまうので倍の量を使わなくてはいけません。

 

 

気分安定薬の副作用や注意点について

リーマス

中毒量にすぐに達してしまうため副作用の頻度は高いです。

手の震え、吐き気、めまい、口の渇きなどの副作用が多いです。

また、リーマスは妊娠中の場合子どもに影響があり、心臓の奇形が起きる可能性が高くなってしまいます

 

デパケン

脳の興奮を抑えるため眠気、ふらつき、だるさなどの副作用の他、過剰な量を飲み続けると高アンモニア血症という副作用が起きてしまい、意識を急に失ったり、呼吸障害が起きてしまうので注意が必要です。

 

デパケンもリーマスと同じく妊娠中の方などは使わない方が良いです。

デパケンは子どもの脊椎の奇形が起きる確率が高くなります。

 

ラミクタール

眠気、めまい、吐き気、物が二重に見えるなどの副作用のほか、先ほど挙げたスティーブンス・ジョンソン症候群の副作用があります。

 

赤い丸型の発疹が全身に出たり、肌のかゆみを感じたりした時は、スティーブンス・ジョンソン症候群の前兆の可能性があるので、即座に医師に連絡して薬の服用を中断・中止しましょう

 

ラミクタールは気分安定薬のなかでは妊娠中の方が飲む場合、一番子どもへの影響が少ない薬です。

300mg未満の量では、まったく薬を飲まない方と子どもになんらかの奇形が発生する確率が変わらなかったという研究報告もあります。

 

 

テグレトール

眠気、めまい、だるさ、吐き気や先ほど挙げたスティーブンス・ジョンソン症候群のほかに、聴こえる音が半音ずれるようになるという珍しい副作用もあります。

 

発疹や肌のかゆみが出た時は、ラミクタールと同じくスティーブンス・ジョンソン症候群の前兆の可能性があるので、即座に医師に連絡して薬の服用を中断しましょう。

 

テグレトールもデパケンと同じ奇形の発生率が高まりますので、妊娠中の方は使うべきではありません。

 

 

ちなみに、使ってみた感じは?

私の妻は、デパケンとラミクタールを併用しています。

最初はデパケンだけを使っていて、うつ症状が辛いとのことでうつに効くラミクタールを追加しています。

 

デパケンとラミクタール

 

デパケンは400mgから始めて600mg→800mg→600mg→400mg→500mgと変わってきました。

800mgのときは躁状態がまったく出ずに、うつ症状はしっかりと出ていましたので、徐々に減量することにしました。

 

200mgずつ減らしていく過程で、「頭の回転が早くなった気がする」、「階段が降りやすくなった(体が動きやすい)」ということを言っていたので、デパケンの鎮静効果が減ったのではないでしょうか。

400mgだと少し軽い躁状態になってしまったので500mgに戻しています。

 

ラミクタールは、デパケンを800mg服用しているときに追加しました。

デパケンと併用すると血中濃度が倍になるので、12.5mgを2日に1回→12.5mを毎日1回→25mgを毎日1回と2週間毎に増やしていきました。

発疹も出ずスティーブンス・ジョンソン症候群も発生しませんでした。

 

デパケンを減らした効果もあるかもしれませんが、それまでうつ症状が月に3~4回出て2~3日はぐったりしていたのが、月に1~2回ぐらいうつ症状が出て、出ても1~2日で気分が回復するようになってきました。

 

 

まとめ

双極性障害(躁うつ病)に使われる基本的な薬は、気分安定薬と言われます。

気分安定薬はリーマス、デパケン、ラミクタール、テグレトールの4種類があり、それぞれが向いている症状が異なります。

 

リーマスは躁のときに楽しくなる場合や家族に躁うつ病の人がいる方に、デパケンは躁のときにいらいらしたり、ラピッドサイクラーの方や躁うつ混合症状が現れる方に向いています。

 

ラミクタールはうつの症状が長く、辛い方に向いており、テグレトールは他の気分安定薬の効果がいまいちなときに選択しましょう。

 

リーマス以外の気分安定薬は躁を抑える効果とともに神経の興奮を抑えるので眠気を引き起こします。

基本的に眠気、だるさ、めまい、吐き気などが気分安定薬の副作用ですが、リーマスは治療に使う量と中毒になってしまう量が近いので、頻繁な血液検査が必要です。

 

また、ラミクタールやテグレトールはいきなり多い量を飲んでしまうと危険なスティーブンス・ジョンソン症候群の副作用がありますので、少ない量から少しずつ増量する必要があります。

もしかゆみや発疹が起きた場合は、前兆かもしれませんので、すぐに医師に連絡して服用を中断しましょう。