双極性障害 躁うつ病

よく眠れない、寝付けないといった不眠症を持っている方でそれに加えて憂うつ感、死にたい気持ちになる(希死念慮)、不安感やそわそわした感じ、頭痛、一日中の体のだるさを感じている方はいませんか?

 

今挙げたのはすべてうつ病の症状であり、うつ病によって不眠などの症状が起きている可能性があります。ですが、実は不眠と同時にうつ病のような症状を起こす病気は他にもたくさんあります。

 

今回の記事では、躁うつ病について解説いたします。うつ病と躁うつ病は診断の区別が難しく、治療法も異なるので、しっかりと分ける必要があります。

 

不眠の原因がうつ病なのか、躁うつ病なのか、それとも別にあるのか区別する方法と躁うつ病への対処法をこちらで紹介いたしますので、ぜひご覧ください。

躁うつ病とは・・・不眠との関係

躁うつ病は双極性障害、双極性感情障害とも呼ばれる精神疾患です。

 

躁うつ病の生涯に1度でも発症する確率は、日本では0.2%(500人に1人)と言われています。日本の人口を今12千万人とすると24万人もの人が躁うつ病であるため決してまれな病気とは言えません。

 

躁うつ病は、その名のとおり躁とうつのふたつの側面を持つ病気です。周期的に下記のような躁とうつのエピソードのいくつかまたは全部を体験します。

 

躁エピソード

特に理由は思いつかないが、

・なんだか気分が良い。

・やる気に満ちており、行動力が高い。

・やりたいことがどんどん思いついて、どんどんやってしまう。

・疲れを感じにくい。1日くらい徹夜しても翌日に響かない。

・金遣いが粗い、性欲が異常に高い(誰とでも性的関係を持ってしまうなど)。

・自分は偉い、すごい人間だと思う。

・いらいらする、誰かを攻撃したくなる。

 

うつエピソード

特に理由は思いつかないが、

・一日中憂うつ感を感じる。

・不安になったり、いらいらする。

・なにかやるべきことがあるのではないかとそわそわする。

・自分は悪い人間だから罰を受けても仕方無いと思う。

・死にたいと思う。

・周りの人はみんな私を嫌っていると思う。

・頭痛や吐き気を感じる。

・体が重い、だるくてトイレにもろくに行けない。

 

躁うつ病の人は、この2つのエピソードとどちらでもない状態を周期的に(半年~1年毎に交代など)繰り返します。

 

躁の時期→うつの時期→どちらでもない時期→うつの時期→躁の時期・・・など。人によってパターンは異なります。なかには1ヶ月~2ヶ月毎に周期を繰り返す急速交代型(ラピッドライクラー)というタイプの方もいます。

 

最高にポジティブな状態と最高にネカディブな状態の2面を持っているので、はたから見ると同一人物に見えなかったり、多重人格なのではないかと思われたりすることもあります。

 

躁でもうつ状態でも寝付きが悪い、ぐっすり眠れないという不眠の症状はあるので、不眠症にあわせて上のような症状があると躁うつ病の可能性が高くなります。

 

 

うつ病なのか? 躁うつ病なのか? それとも別の原因?

躁うつ病の躁の時期は非常に短く、さらに躁の時期は非常に気分が良いのでとても病気だとは自分も思いませんし、周りの人もやる気に満ちて行動力の高いすばらしい人という見方をしがちです。

 

そのためこの時期に病院にかかることがほとんどありません。その後うつの時期になると毎日つらい思いをします。

 

そのときに病院にかかって、うつの症状だけを先生に話すと本当は躁うつ病なのにうつ病と診断されてしまうことがあります。

 

区別するポイントは、躁うつ病特有の症状とうつ病特有の症状を見極めることです。躁うつ病特有の症状といえばやはり躁のエピソードです。躁のエピソードがあれば、躁うつ病の可能性は高くなるでしょう。

 

ただし、躁うつ病と間違えやすいものがあります。それは境界性人格障害です。

 

こちらは病気ではなく考え方の歪みが生活に問題を起こすものです。機嫌が良いときと悪いときと別人のようであったり、気分が短時間でころころ変わる、攻撃的な性格と自虐的な性格の二面性を持っているところが躁うつ病に似ています。

 

境界性人格障害の方は、他の人への依存が強く、気分の移り変わりも躁うつ病のように1ヶ月~半年といったスパンどころか1日のうちでもころころ変わるところが躁うつ病と違います。

 

躁うつ病の特有の症状に対して、うつ病特有のものは、一日のうちで朝が一番辛く夕方になると辛い気持ちが少し軽くなってくる(日内変動と言います)ところです。

 

躁うつ病のうつ症状にも日内変動がありますが、うつ病の場合と逆で朝は辛くないが、夜になるにつれて辛くなってきます。

 

また、躁うつ病は100%の確率ではありませんが遺伝が関係ある病気ですので、親族に躁うつ病の方がいらっしゃる場合はそれも診断の手がかりとなります。

 

 

躁うつ病の原因とメカニズム

躁うつ病の原因やメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因を持っている人が過度なストレスを長期間浴び続けることで発症してしまう確率が高いと言われています。

 

躁とうつの症状が起こってしまうメカニズムとしては、以下のようなものが研究によって仮説として立てられています。

 

(1)モノアミン仮説

セロトニンドーパミンノルアドレナリンといった脳内ホルモン(モノアミンといいます)の働きが上手くいかなくなり、不足したり過剰になることで症状が起きる。

 

(2)グルタミン酸仮説

人の体のなかで興奮系のグルタミン酸システムに異常が生じ、過剰な興奮にストップがかからなくなり躁の症状が起きる。グルタミン酸は過剰に働くと神経にダメージを与えてしまうため、しばらくして神経が傷つき、うつの症状が起きてしまう。

 

(3)神経炎症仮説

脳の神経が炎症を起こすことによってうつの症状が起きてしまう。炎症が起きている時にはサイトカインという物質が発生するが、このサイトカインには体をだるくさせたり憂うつ感を起こす原因であるとわかっている。

 

(4)ミトコンドリア障害とカルシウム仮説

人の神経同士が情報を伝える際には、上で書いたモノアミン以外にカルシウムクロールナトリウムといった物質が重要な働きをしています。

 

また、人の細胞内にはミトコンドリアというものがあり。このミトコンドリアは細胞が使うエネルギーを生み出したり、細胞内のカルシウム濃度を調節する機能があります。

 

このミトコンドリアに障害が起きることでカルシウム濃度の調節がうまくいかなくなり、神経細胞同士も情報伝達が上手くいかなくなることで躁うつ病の症状が起きてしまう。

 

このように様々な仮説が立てられ、躁うつ病のメカニズムの究明が進められています。これらの仮説はこれまで躁うつ病に対して使われてきた薬のメカニズムと照らし合わせてみても非常に有力です。

 

躁うつ病の治療法は? 薬を使わなくてはいけない?

それでは肝心の治療方法について説明します。もしも不眠の原因が躁うつ病であれば、躁うつ病の症状が軽くなれば不眠も良くなってきますので、ぜひご覧ください。

 

1.薬による治療

これは躁うつ病の大前提になります。うつ病の場合、軽度であればストレス源から離れてゆっくり休んだり、太陽の光をしっかり浴びたり、生活習慣を改善することで薬を使わずに治療することができます。

 

しかし、躁うつ病は軽度か重度かに関わらず薬による治療が必須です。しばらくは症状が落ち着いたとしても薬をやめてしまった場合はその後確実に躁かうつの症状が再発します。

 

そして再発の度に症状が重くなり、再発までの期間も短くなってしまいます。予防や進行を防ぐために薬の服用は継続しなければなりません。

 

躁うつ病に使われる基本的な薬としては以下のものがあります。薬の名前(有効成分名)という形で紹介します。

 

リーマス(リチウム)

デパケン(バルプロ酸ナトリウム)

テグレトール(カルバマゼピン)

ラミクタール(ラモトリギン)

 

躁うつ病には他にも躁状態のときには、躁を抑える抗精神病薬という種類の薬が、うつ状態のときにはうつを抑える抗うつ薬という薬が使われます。

 

また、不眠症がほぼ確実に症状として現れるので睡眠薬を処方されることも多いです。

→躁うつ病に使われる基本の薬について(近日公開予定です)

 

2.心理的・社会的療法

こちらは薬を使わない治療法です。あくまで薬物療法のサポートといった形で行われます。

 

心理教育

躁うつ病についての知識を身につける治療法になります。目的は、躁状態のときは異常なことであってそれを基準に考えない、躁状態を求めないようにすることです。

 

躁状態は、非常に気分がすっきりしていたり、行動力が上がったりするので躁うつ病の方は自ら進んで躁状態になりたいと思ってしまうことが多いのです。

 

しかし、たいていの場合において躁状態のあとにはうつ状態が待っており、躁状態のときの発言や行動を後悔して辛くなります。

 

また、躁状態のときに活発に行動すればするほど反動でうつが大きくなってしまうのです。

 

 

対人関係社会リズム療法

 

躁うつ病の方は、対人関係で認識や思考に歪みがあることがあり、他の人よりもストレスを抱えやすいことが分かっています(自分に責任はないのに過剰に自分を責めてしまうなど)。

 

そのため対人関係でのストレスを減らし、生きやすくするための心理療法がこの対人関係社会リズム療法です。

 

それと同時に躁うつ病の方は睡眠と起床のリズムが崩れていることが多いので、それを修正することで不眠症にも効果的な治療法です。

 

 

まとめ

もし不眠症の原因が躁うつ病であれば、躁うつ病の治療を行うことによって睡眠も改善されるので、思い当たることがあればぜひ見てみてください。

 

躁うつ病は、うつ病と同じようなうつの症状と気分が爽快で行動力が上がるなどの躁の症状の2面性を持つ病気です。躁うつ病もうつ病も両方不眠の症状があるため、うつ病を疑うときは躁うつ病の可能性も同時に考えましょう。

 

躁うつ病とうつ病の判断の仕方は、躁の症状が一度でもあったかどうかと朝が一番気持ちが辛く夕方にかけて楽になるという特徴があるかどうかです。

 

これがあればうつ病、逆に夜になると辛くなってくるようであれば躁うつ病の可能性が高いです。また、躁うつ病は遺伝が関係する病気なので親族の方に躁うつ病の方がいるかどうかも重要な手がかりになります。

 

躁うつ病の原因は、今のところ遺伝的要因を持っている方が強烈なストレスに長い間さらされることによって発症すると言われています。症状が起きてしまうメカニズムは複雑で、様々なものがありますが、基本的な治療法は薬を使った治療法です。

 

そのほかにサポート的な方法として薬を使わない心理的・行動療法があります。どちらも専門の医師のもと行う必要がありますので、お近くのメンタルクリニックなどでかかりつけの先生を作りましょう。